インフラ老朽化をAI点検で解決!最新活用事例5選

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AI活用術

インフラ老朽化をAI点検で解決!最新活用事例5選【2026年版】

日本全国の橋梁・トンネル・水道管といった社会インフラが、いま急速に老朽化しています。国土交通省の調査によれば、建設後50年以上が経過する橋梁の割合は2033年には約63%に達する見込みです。少子高齢化による技術者不足や財政難が重なる中、AI(人工知能)を活用した点検技術が注目を集めています。

この記事では、インフラ老朽化問題の現状を整理したうえで、2026年時点で実用化・実証が進むAI点検の活用事例を5つ厳選してご紹介します。コスト削減率や精度向上といった具体的な数値も交えながら解説しますので、行政・建設・インフラ関連の方はもちろん、テクノロジーに関心のある方にも役立てていただける内容です。

AI社会実装 最新事例


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目次

  1. 日本のインフラ老朽化——どこまで深刻なのか?
  2. なぜ「人による点検」だけでは限界なのか
  3. AI点検とは?基本的な仕組みと技術
  4. 活用事例①:橋梁のひび割れ検出(画像認識AI)
  5. 活用事例②:トンネル壁面の異常検知(ドローン×AI)
  6. 活用事例③:水道管漏水の予兆検知(音響センサー×AI)
  7. 活用事例④:道路舗装の劣化診断(走行データ×AI)
  8. 活用事例⑤:電力送電線の点検(衛星画像×AI)
  9. AI点検導入のメリット・課題
  10. 今後の展望——インフラDXの加速
  11. まとめ

1. 日本のインフラ老朽化——どこまで深刻なのか?

高度経済成長期(1960〜1970年代)に集中整備された日本のインフラは、今まさに「更新の波」を迎えています。以下の数字を見ると、問題の深刻さが一目瞭然です。

  • 橋梁:国内約73万橋のうち、2033年には約63%が建設後50年超(国土交通省、2023年)
  • トンネル:約1万1,000本のうち、2033年には約42%が50年超
  • 水道管:総延長約74万kmのうち、法定耐用年数(40年)を超えた管は約20%以上
  • 道路(舗装):市町村管理道路を中心に、修繕が追いつかない「修繕未実施路線」が増加

2012年の中央自動車道・笹子トンネル天井板崩落事故(死者9名)は、老朽化インフラのリスクを社会全体に突きつけた転換点でした。それ以降、定期点検の義務化(道路法改正)が進みましたが、点検を担う専門技術者の絶対数不足という新たな課題が浮き彫りになっています。

2. なぜ「人による点検」だけでは限界なのか

インフラ点検の主流は長らく、熟練技術者が目視・打音で行う「近接目視点検」でした。しかし、この方法には以下のような構造的な問題があります。

技術者不足と高齢化

国内の橋梁点検士や土木技術者の平均年齢は上昇しており、若手への技術継承が追いついていません。土木学会の試算では、2030年までに必要な点検人員の約30%が不足する可能性があるとされています。

コストと時間の問題

大規模橋梁1橋の近接目視点検には数百万〜数千万円のコストと数週間の通行規制が伴うケースもあります。全国規模で計画的に実施するのは財政的に困難な自治体が多いのが現状です。

主観・ばらつきの問題

目視点検はどうしても担当者の経験や判断に依存します。同じ損傷を見ても評価が異なることがあり、データの蓄積・比較が難しいという課題もあります。

DX人材不足 対策

3. AI点検とは?基本的な仕組みと技術

AI点検とは、カメラ・センサー・ドローンなどで取得したデータをAIが自動解析し、損傷の検出・劣化度の評価・修繕優先度の判定などを行う技術の総称です。中心となる技術要素は以下のとおりです。

  • 画像認識AI(ディープラーニング):ひび割れ・剥離・腐食などを高精度で自動検出
  • ドローン(UAV):人が近づきにくい場所の画像・動画データを効率的に取得
  • IoTセンサー:振動・音響・ひずみなどをリアルタイム計測
  • 衛星・航空測量(SAR/LiDAR):広域の変位・地盤沈下を高精度で把握
  • デジタルツイン:実物のインフラをデジタル空間で再現し、劣化シミュレーションを実施

これらを組み合わせることで、「データ収集→AI解析→劣化度評価→修繕計画策定」までを一気通貫で効率化できます。

4. 活用事例①:橋梁のひび割れ検出(画像認識AI)

概要

東京都建設局とNECが共同実施したプロジェクトでは、都内の橋梁コンクリート面をカメラで撮影し、ディープラーニングモデルがひび割れの位置・幅・深度を自動検出するシステムを導入しました(2025年度〜継続実証中)。

導入効果

  • ひび割れ検出精度:熟練技術者と比較して同等以上(精度約94%)
  • 点検時間:従来比約60%削減
  • 報告書作成工数:約40%削減(AI自動マッピング機能による)

ポイント

学習データには過去10年分の点検画像(約50万枚)を使用。季節・天候・照明条件の変化にも対応するよう汎化性能を高めているのが特徴です。スマートフォンやタブレットから現場で即時解析できる軽量モデルも開発されており、地方自治体への展開も進んでいます。

5. 活用事例②:トンネル壁面の異常検知(ドローン×AI)

概要

NEXCO西日本とスタートアップ企業・Liberawareが取り組む「狭小空間ドローン点検」は、直径50cm以下の小型ドローンがトンネル内部を自律飛行し、4Kカメラで壁面を撮影。取得した画像をAIがリアルタイム解析して、剥落・漏水・変色などの異常箇所を特定します。

導入効果

  • 交通規制時間:従来の近接目視と比較して約75%短縮
  • 点検コスト:30〜50%削減(足場設置費用・通行止め損失の低減)
  • 見落とし率:高所・暗所など目視困難な箇所の検出率が大幅に向上

ポイント

ドローンが生成する3D点群データとAI解析結果を組み合わせることで、損傷の「位置情報」と「経年変化」を可視化したデータベースを構築できます。次回点検時との比較が自動化され、劣化速度の予測精度が向上するという相乗効果も生まれています。

ドローン産業 最新動向

6. 活用事例③:水道管漏水の予兆検知(音響センサー×AI)

概要

全国の水道管の多くは高度経済成長期に埋設されたもので、老朽化による漏水が深刻な問題です。漏水率(無収水率)は自治体によっては10%を超えるケースもあります。

横浜市水道局が導入したシステムでは、水道管に取り付けた音響センサーが管内を伝わる音波データを常時収集。AIが正常時の音波パターンと比較分析し、漏水が発生する前の「予兆段階」でアラートを発報します。

導入効果

  • 漏水検知の平均リードタイム:従来(苦情ベース発見)より平均3〜4週間前倒し
  • 漏水修繕コストの削減:道路掘削・二次被害を防ぐことで1件あたり平均約200万円削減
  • 年間漏水量:導入区域で約15%減少

ポイント

IoTセンサーと5G通信を組み合わせることで、膨大な音響データをほぼリアルタイムでクラウドへ送信・解析する仕組みが実現しました。地震などの外部ノイズを除去する前処理AIも組み込まれており、誤検知率を低く抑えています。

7. 活用事例④:道路舗装の劣化診断(走行データ×AI)

概要

スマートフォンやタブレットを搭載した一般車両・路線バスが走行中に取得する加速度データを活用する「プローブ点検」に、AIを組み合わせた手法が急速に普及しています。

富士通と複数の地方自治体が展開するシステムでは、車両の振動データをAIが解析し、路面のわだち掘れ・ひび割れ・段差などを位置情報付きで自動マッピング。専用の点検車両を走らせることなく、日常的なバス運行データで面的な舗装劣化を把握できます。

導入効果

  • 点検コスト:専用車両点検と比較して約70〜80%削減
  • 点検頻度:路線バスの定期運行を活用することで月次〜週次での状態把握が可能に
  • 修繕の優先順位付け:AIスコアリングにより予算配分の効率化を実現

ポイント

特に財政規模の小さい地方自治体にとって、初期投資を抑えながら広域の道路状態を継続的に把握できる点が評価されています。2026年現在、全国200以上の自治体への展開が進んでいます。

8. 活用事例⑤:電力送電線の点検(衛星画像×AI)

概要

山岳地帯や離島を通る送電線の点検は、アクセスの困難さから特にコストと時間がかかります。東京電力パワーグリッドとNTTデータが推進するプロジェクトでは、SAR(合成開口レーダー)衛星画像とAIを組み合わせ、鉄塔の傾斜・腐食・周辺樹木の接近リスクを広域で自動検出します。

導入効果

  • ヘリコプター点検の回数:約40%削減(異常の疑いがある箇所に絞った重点点検が可能に)
  • 点検エリアのカバレッジ:年1回→月次更新へ(衛星の定期観測活用)
  • CO₂排出量:ヘリ飛行削減により年間約120トン削減(試算)

ポイント

地上では気づきにくい地盤変動や地滑りの予兆もAIが検出できるため、送電線事故の予防的対策として機能します。気候変動による自然災害リスクが高まる中、インフラのレジリエンス(強靭化)強化という観点でも注目されています。

9. AI点検導入のメリット・課題

✅ メリットのまとめ

観点 内容
コスト削減 点検工数・足場設置・交通規制費用などを平均30〜80%削減
精度向上 目視困難な箇所の検出、ミクロなひび割れの定量評価が可能
データ蓄積 経年変化の自動比較、劣化予測モデルの構築
人手不足対応 技術者1人あたりの点検可能件数が大幅に増加
安全性 高所・狭所・交通量の多い箇所での作業員リスク低減

⚠️ 課題と留意点

AI点検はメリットが大きい一方、導入にあたっては以下の課題も認識しておく必要があります。

  • 学習データの量・質:精度の高いAIモデルには大量の正解ラベル付き画像が必要。地方の特殊な構造物には対応できないケースも。
  • 最終判断は人間が行う:現行の法令(道路法、河川法など)では、点検結果の最終的な評価・記録は有資格者による確認が必要。AIはあくまで「補助ツール」。
  • 初期導入コスト:センサー設置・システム構築・職員研修など、導入時の費用負担が課題となる自治体も多い。
  • ベンダーロックイン:特定企業のシステムに依存すると、将来的なデータ移行・更新に支障が出るリスクがある。
  • サイバーセキュリティ:インフラ情報はセキュリティ上の重要データ。クラウド管理時の不正アクセス対策が不可欠。

サイバーセキュリティ 対策 基礎

10. 今後の展望——インフラDXの加速

2026年2月現在、国土交通省が推進する「インフラDX大綱」のもと、AI点検技術の標準化と全国展開が本格化しています。特に注目すべきトレンドは以下の3点です。

① デジタルツインとの統合

AIで取得した点検データをデジタルツイン(BIM/CIM)に統合することで、構造物の「現状把握」から「将来予測」「修繕シミュレーション」まで一元管理する動きが加速しています。

② 生成AI・LLMの活用

最新の大規模言語モデル(LLM)を活用した点検報告書の自動生成や、過去の補修履歴・気象データ・交通量を総合したリスク評価の自動化も実用段階に入りつつあります。

③ 官民データ連携プラットフォームの整備

国・都道府県・市町村・民間事業者がインフラデータを共有する「インフラデータプラットフォーム」の構築が進んでおり、AI学習データの相互活用によるモデル精度向上が期待されています。

デジタルツイン 建設DX

11. まとめ

インフラ老朽化という日本が直面する深刻な社会課題に対し、AI点検技術は確実に「解決策の一つ」として実用フェーズに入っています。本記事で紹介した5つの事例からもわかるとおり、コスト削減・精度向上・人手不足対応という三拍子が揃った技術として、行政・民間双方での導入が加速しています。

もちろん、AIはすべての課題を一夜にして解決する魔法の道具ではありません。法制度の整備、データ品質の確保、人材育成——これらと組み合わせて初めて、AI点検は最大限の効果を発揮します。

今後も「すくぶろ」では、AIが社会課題を解決する最前線の事例をわかりやすくお届けしていきます。ぜひ他の記事もあわせてご覧ください。

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