画像生成AIの商用利用における著作権の基本
画像生成AIの技術革新により、誰でも簡単にクオリティの高い画像を作成できるようになりました。しかし、ビジネスで利用する際には著作権の問題が必ず浮上します。本記事では、画像生成AIを商用利用する際の著作権について、法律的な観点と実務的な注意点を詳しく解説します。
なぜ画像生成AIの著作権が問題になるのか
画像生成AIの著作権問題は、主に以下の3つの理由から複雑になっています。
1. AI生成物の著作権帰属が不明確
日本の著作権法では、著作物は「思想又は感情を創作的に表現したもの」と定義されています。AIが自動生成した画像に人間の「創作性」があるのか、そもそも著作権が発生するのかという点が議論されています。
2. 学習データの著作権
多くの画像生成AIは、インターネット上の膨大な画像データを学習しています。その中には著作権で保護された作品も含まれており、学習データの使用自体が著作権侵害にあたるのではないかという議論があります。
3. 既存作品との類似性
AIが生成した画像が既存の著作物と酷似している場合、著作権侵害とみなされるリスクがあります。特定のアーティストのスタイルを模倣した画像生成なども問題視されています。
日本における著作権法の現状
2023年5月、文化庁は「AIと著作権に関する考え方について」という報告書を公表しました。この中で重要なポイントをまとめます。
AI生成物の著作権について:
- AIが自動的に生成しただけの画像には著作権が発生しない可能性が高い
- 人間が創作的に関与した場合(詳細なプロンプト設計、生成後の加工など)は著作権が認められる可能性がある
- 著作権が認められた場合、その権利は人間の利用者に帰属する
AI学習における著作物利用について:
- 著作権法第30条の4により、AI学習目的での著作物利用は原則として許容される
- ただし、著作権者の利益を不当に害する場合は例外とされる
主要な画像生成AIサービスの商用利用規約比較
画像生成AIサービスごとに商用利用の可否や条件が異なります。代表的なサービスの規約を比較してみましょう。
Midjourney(ミッドジャーニー)
商用利用: 有料プランで可能
Midjourneyは、有料プラン(月額10ドル〜)に加入することで商用利用が認められます。具体的な条件は以下の通りです。
- Basic、Standard、Proプラン: 年間売上100万ドル未満の企業・個人は商用利用可能
- 年間売上100万ドル以上の企業: Proプラン(月額60ドル)以上が必要
- 著作権の帰属: 生成画像の権利は利用者に帰属(Creative Commons BY-NC 4.0ライセンスの対象外)
- 無料プラン: 現在は提供されておらず、商用利用不可
Midjourneyの強みは、生成画像のクオリティの高さと、商用利用における権利関係が比較的明確な点です。ただし、他のユーザーが生成した画像を閲覧できるため、機密性の高いプロジェクトには注意が必要です。
Stable Diffusion(ステーブルディフュージョン)
商用利用: オープンソースモデルは基本的に可能
Stable Diffusionはオープンソースの画像生成AIであり、基本的に商用利用が可能です。ただし、使用するモデルやバージョンによって条件が異なります。
- Stable Diffusion 1.x / 2.x: CreativeML Open RAIL-Mライセンス下で商用利用可能
- 禁止事項: 違法行為、人を欺く目的、ハラスメント、個人情報の悪用など
- 著作権: 生成画像の権利は利用者に帰属するが、既存作品との類似性には注意が必要
- カスタムモデル: 第三者が作成したモデルには独自のライセンスが適用される場合がある
Stable Diffusionは自由度が高い反面、利用者自身が法的リスクを判断する必要があります。特にカスタムモデルを使用する場合は、そのモデルのライセンスを必ず確認しましょう。
DALL-E 3(OpenAI)
商用利用: ChatGPT Plusまたは有料API利用で可能
OpenAIのDALL-E 3は、ChatGPT Plusの機能として提供されており、商用利用が認められています。
- 利用条件: ChatGPT Plus(月額20ドル)またはAPI利用が必要
- 著作権: 生成画像の権利は利用者に帰属
- 販売・再配布: 可能(印刷物、商品、NFTなど)
- クレジット表記: 不要
- コンテンツポリシー: 違法・有害・誤解を招くコンテンツの生成は禁止
DALL-E 3は安全性フィルターが厳しく、特定の人物や著作権で保護されたキャラクターの生成が制限されているため、商用利用において比較的安全性が高いと言えます。
Adobe Firefly(アドビ ファイアフライ)
商用利用: Adobe Creative Cloudプランで可能
Adobeが提供するFireflyは、商用利用を前提として設計されており、企業ユースに最適です。
- 学習データ: Adobe Stock、著作権フリー画像、パブリックドメイン作品のみを使用
- 著作権保証: 生成画像に対する一定の法的保護(補償プログラム)を提供
- 商用利用: すべての有料プランで可能
- クレジット表記: 不要
Fireflyの最大の特徴は、学習データが厳選されており、著作権侵害のリスクが非常に低い点です。企業がリスクを最小限に抑えて画像生成AIを利用したい場合、最も安全な選択肢の一つと言えるでしょう。
その他の画像生成AIサービス
Canva AI: Canvaの有料プラン(Pro、Enterpriseなど)で商用利用可能。生成画像の権利は利用者に帰属します。
Leonardo.ai: 有料プランで商用利用可能。柔軟なライセンス体系で、企業向けプランも提供されています。
NovelAI: サブスクリプションプランで商用利用可能。アニメ風イラストに特化しており、クリエイター向けの機能が充実しています。
商用利用で避けるべき著作権リスク
画像生成AIを商用利用する際には、以下のような著作権リスクを理解し、適切に回避する必要があります。
1. 既存作品との類似性リスク
AIが生成した画像が既存の著作物と酷似している場合、著作権侵害とみなされる可能性があります。
リスクが高いケース:
- 特定の漫画・アニメキャラクターに似た画像を生成する
- 有名な絵画やイラストのスタイルを明示的に指定する
- 実在する企業のロゴやキャラクターを模倣する
- 著名な芸術家の名前を直接プロンプトに含める
対策:
- プロンプトに特定の作品名やキャラクター名を使用しない
- 生成画像を使用前に既存作品との類似性を確認する(Google画像検索などを活用)
- オリジナリティを高めるために複数の生成画像を組み合わせる
- 生成後に人の手で加工・編集を加える
2. 肖像権・パブリシティ権の侵害リスク
実在する人物の顔や姿に似た画像を生成し、それを商用利用することは肖像権やパブリシティ権の侵害になる可能性があります。
リスクが高いケース:
- 有名人や芸能人の名前を使って画像を生成する
- 実在する人物の写真をベースに画像を生成する
- 特定個人を識別できる画像を無断で商用利用する
対策:
- 実在する人物名をプロンプトに使用しない
- 人物画像を使用する場合は、完全に架空のキャラクターとして生成する
- 実在する人物に似ている場合は、商用利用を避けるか大幅に加工する
3. 商標権侵害のリスク
企業ロゴや商標登録されたデザインに類似した画像を生成し、商用利用することは商標権侵害になる可能性があります。
リスクが高いケース:
- 有名ブランドのロゴやシンボルに似た画像を生成する
- 登録商標と同一または類似のデザインを使用する
- 特定企業を連想させる配色やデザインパターンを使用する
対策:
- 企業名やブランド名をプロンプトに使用しない
- 商標データベース(特許情報プラットフォームJ-PlatPatなど)で類似性を確認する
- 完全にオリジナルのデザインになるよう複数回生成を繰り返す
4. 学習データ由来の権利侵害リスク
AIの学習データに含まれる著作物の要素が生成画像に現れる場合、間接的な著作権侵害のリスクがあります。
対策:
- 学習データの出典が明確なAIサービスを選ぶ(Adobe Fireflyなど)
- 著作権フリー素材のみで学習されたモデルを使用する
- 複数のAIサービスで生成した画像を比較し、特定のパターンに偏らないようにする
商用利用を安全に行うための実践的ガイドライン
画像生成AIを商用利用する際に、著作権リスクを最小限に抑えるための実践的なガイドラインを紹介します。
ステップ1: 適切なAIサービスとプランを選択する
商用利用の目的に応じて、最適なAIサービスを選びましょう。
低リスクで安全性を重視する場合:
- Adobe Firefly(学習データが厳選されており、補償プログラムあり)
- DALL-E 3(安全性フィルターが厳しい)
- Canva AI(統合プラットフォームで管理が容易)
コストを抑えたい場合:
- Stable Diffusion(オープンソースで無料利用可能)
- Leonardo.ai(柔軟な価格設定)
高品質な画像を求める場合:
- Midjourney(アート性の高い画像生成)
- DALL-E 3(自然言語理解力が高い)
ステップ2: プロンプト設計で著作権リスクを回避する
プロンプトの書き方によって、著作権リスクを大幅に減らすことができます。
避けるべきプロンプト表現:
- 「○○風」「○○スタイル」(特定のアーティスト名)
- 「△△のような」(特定の作品名)
- 「□□に似た」(特定のキャラクター名)
- 実在する企業名、ブランド名、商品名
推奨されるプロンプト表現:
- 「抽象的な」「幾何学的な」「ミニマルな」などの一般的な形容詞
- 「暖色系の」「パステルカラーの」などの色彩表現
- 「水彩画風の」「油絵風の」などの技法表現(特定の作家に言及しない)
- 「ファンタジー風景」「未来都市」などのジャンル表現
具体例:
❌ リスクの高いプロンプト:
「宮崎駿スタイルのジブリ風景、トトロのような生き物がいる森」
⭕ リスクの低いプロンプト:
「手描きアニメーション風の幻想的な森、柔らかい光が差し込む、架空の生き物が住んでいる、暖かい色調」
ステップ3: 生成後の確認と加工
画像を生成した後は、必ず以下の確認と処理を行いましょう。
類似画像検索:
- Google画像検索の「画像で検索」機能を使用
- TinEye(類似画像検索エンジン)で確認
- 既存の著作物と酷似していないか目視チェック
人の手による加工:
- Photoshopや画像編集ソフトで部分的に修正
- 色調補正、トリミング、エフェクト追加などで独自性を加える
- 複数の生成画像を組み合わせる
- テキストやグラフィック要素を追加する
人の手による創作的な加工を加えることで、著作権が認められやすくなり、また既存作品との差別化も図れます。
ステップ4: 利用規約と権利関係を文書化する
商用利用する場合は、権利関係を明確に記録しておくことが重要です。
記録すべき情報:
- 使用したAIサービス名とプラン
- 生成日時とプロンプト内容
- 加工・編集の履歴
- 利用規約のスクリーンショットまたはPDF保存
- 類似画像検索の結果
これらの記録は、万が一著作権に関する問題が発生した際に、適切に対応していたことを証明する材料となります。
ステップ5: 継続的な情報収集と更新
画像生成AIを取り巻く法律や規約は日々変化しています。最新情報を継続的にチェックしましょう。
情報源:
- 文化庁のAI著作権に関する報告書と更新情報
- 各AIサービスの利用規約更新通知
- 知的財産権に関する専門家のブログや記事
- AIと著作権に関する判例や法改正情報
業種別・用途別の商用利用事例と注意点
実際のビジネスシーンで画像生成AIを活用する際の、業種別の事例と注意点を紹介します。
Webデザイン・マーケティング素材
用途: ウェブサイトのヒーロー画像、バナー広告、SNS投稿、ブログアイキャッチ画像
推奨サービス: Adobe Firefly、Canva AI、DALL-E 3
注意点:
- 企業ブランディングに使用する場合は、一貫性のあるスタイルを維持する
- 競合他社のビジュアルと差別化を図る
- 人物画像を使う場合は、実在の人物に似ないよう注意する
- 定期的にビジュアルを更新し、他社との重複を避ける
成功事例: あるD2Cブランドは、Adobe Fireflyを使用して商品イメージ画像を生成し、撮影コストを70%削減しました。生成画像をベースに人の手で加工を加えることで、ブランドの独自性を保ちながら高速でコンテンツを制作しています。
出版・コンテンツ制作
用途: 電子書籍の表紙、記事の挿絵、教材のイラスト
推奨サービス: Midjourney、DALL-E 3、Leonardo.ai
注意点:
- 出版物は長期間流通するため、著作権リスクを特に慎重に検討する
- 挿絵は必ず人の手で加工・調整を加える
- キャラクターを継続的に使用する場合は、生成画像のスタイルガイドを作成する
- 印刷品質に耐える解像度を確保する
成功事例: ある教育系出版社は、Midjourneyで生成した画像をベースに、イラストレーターが加工することで、教材制作のスピードを2倍に向上させました。完全にAI生成のまま使用せず、必ず人の手を加えることで著作権の明確化と品質管理を両立しています。
ゲーム開発
用途: コンセプトアート、背景画像、テクスチャ、UIデザイン
推奨サービス: Stable Diffusion、Midjourney、Leonardo.ai
注意点:
- ゲーム内アセットとして使用する場合は、利用規約で二次利用が許可されているか確認
- キャラクターデザインは完全オリジナルになるよう十分に加工する
- 他のゲームタイトルのビジュアルと類似しないよう注意
- NFTゲームの場合は、特に権利関係を明確にする
商品パッケージ・グッズデザイン
用途: 商品パッケージ、Tシャツデザイン、ステッカー、ポスター
推奨サービス: Adobe Firefly、Canva AI
注意点:
- 物理的な商品として販売する場合は、特に慎重に権利関係を確認
- 商標登録されているデザインとの類似性を徹底的にチェック
- 大量生産前に法律専門家のレビューを受けることを推奨
- AI生成であることを明示するか否かは、ターゲット顧客に応じて判断
広告・プロモーション
用途: SNS広告、動画サムネイル、プレゼンテーション資料
推奨サービス: DALL-E 3、Canva AI、Adobe Firefly
注意点:
- 広告審査で問題にならないよう、プラットフォームのポリシーも確認
- 誤解を招く表現や虚偽広告にならないよう注意
- 期間限定キャンペーンなど、短期的な利用でもリスク管理は徹底する
- 競合他社の広告と差別化を図る
トラブルを避けるための法的対策
画像生成AIの商用利用において、法的トラブルを未然に防ぐための対策を紹介します。
契約書・利用規約の整備
クライアントワークやB2Bサービスで画像生成AIを使用する場合は、契約書に以下の条項を含めることを検討しましょう。
- AI使用の開示: 画像生成AIを使用することをクライアントに事前に通知する条項
- 責任の所在: 著作権侵害が発生した場合の責任分担を明確にする
- 保証の範囲: 提供する画像がどの程度の法的保証を伴うか明示する
- 修正対応: 問題が発見された場合の修正対応について定める
保険の検討
大規模にAI生成画像を商用利用する企業は、知的財産権侵害保険の加入を検討する価値があります。
カバー範囲:
- 著作権侵害訴訟の弁護士費用
- 損害賠償金
- 和解金
特にAdobe Fireflyは、企業向けプランで一定の補償プログラムを提供しており、リスクヘッジの手段として有効です。
専門家への相談
以下のような場合は、知的財産権に詳しい弁護士や専門家に相談することを強く推奨します。
- 大規模な商用利用を開始する前
- 高額な商品やサービスに使用する場合
- 国際的に展開するビジネスで使用する場合
- 既存の著作物との類似性に不安がある場合
- 著作権侵害の警告を受けた場合
初期投資として専門家に相談することで、後々の大きなトラブルを防ぐことができます。
今後の展望と対応すべき変化
画像生成AIと著作権を巡る状況は、今後も大きく変化していくと予想されます。
法整備の進展
各国で画像生成AIに関する法整備が進んでいます。
日本: 文化庁が「AIと著作権に関する考え方」を示していますが、今後さらに具体的な法改正が行われる


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